産婦人科医として多くの命の誕生に立ち会い、同時に、抗えない現実に直面してきた平林医師。 「生まれてきた命を、どう守り、どう支えていけるか」 その切実な問いへの答えを求め、彼は先端医療の一翼を担うエクソソーム治療の道へと踏み出しました。
本記事では、映画『きみがいるだけで』に映し出された自身の姿を振り返りながら、医学的なデータだけでは測れない「生きる力」の本質、そして家族の想いと共に歩む次世代医療の展望について、深く語っていただきました。
出典 :ドキュメンタリー映画『きみがいるだけで』公式パンフレット
スペシャルインタビュー:平林 医師
INDEX
この映画が描いた「自分の姿」をご覧になって、 どのように感じられましたか?
ドキュメンタリー映画を通して、改めて客観的に自分をみることができました。そうした中、感じたことは、医療は決して「治す」ことだけを目的とするものではなく、「共に歩む」営みであるということです。
カメラは私たち医療者の日常を飾ることなく映し出し、そこにあるのは、病気と闘う子どもたちと、それを支える家族の真摯な姿でした。私が出会うのは、医学的なデータではなく、一人ひとりの人生そのものです。
子どもたちが少しでも笑顔を見せる瞬間、家族がわずかな変化に喜びを見出す瞬間にこそ、医療の本質があると思っています。
この映画は、そうした小さな希望の積み重ねを丁寧にすくい上げてくれました。私は、自分が何かをしてあげているのではなく、むしろ子どもたちやご家族から「生きる力」を教えてもらっているのだと、強く感じました。
医療は科学でありながら、人の心と深く結びついた営みです。治療の一歩一歩には家族の想いがあり、その想いがあるからこそ、私たちはあきらめずに挑戦を続けられるのだと思います。
エクソソーム治療を始められたきっかけ、 そしてこの治療に込めた思いを教えてください。
私はもともと産婦人科医として、多くの命の誕生に立ち会ってきました。しかしその一方で、出産の過程で脳に障害を負ってしまう子どもたちにも数多く出会いました。
無事に生まれてきたはずの命が、次の瞬間には重い障害を抱えてしまう。その現実を前に、医療者としての無力さを痛感しました。そこから「生まれてきた命を、どう守り、どう支えていけるか」という問いが、私の原点となりました。
やがて再生医療の分野に出会い、幹細胞を培養する過程で得られる上澄み液、すなわちエクソソームに注目しました。これは細胞同士が情報を伝え合う重要な物質で、傷ついた組織の修復に寄与する可能性を持っています。
奇跡を信じるのではなく、医学の力で希望の扉を少しでも開きたい。その思いが、私をこの治療へと導いたのです。いまは、一人でも多くの子どもに「生きる力」を取り戻してほしいという願いで日々取り組んでいます。
患者さんやご家族と向き合う中で、 特に心に残っている出来事はありますか。
私が何よりも忘れられないのは、治療の現場で起こる小さな奇跡の瞬間です。
長い間、まったく反応がなかった子どもが、ある日ふと目を合わせ、笑顔を見せてくれる。そのわずかな変化に気づいたご家族が涙を流して喜ぶ姿を見ると、医療の意味とは何かを深く考えさせられます。
医師として「治す」ことだけを追いかけるのではなく、「その子とともに生きる」ことこそが、私の使命なのだと思うのです。
あるご家庭では、治療を重ねるうちに、お子さんが初めて自分の力で立ち上がろうとした瞬間がありました。お父さんは言葉にならない表情でその姿を見つめ、お母さんは震える手で涙をぬぐっていました。その場に立ち会えたことは、医師として何よりの喜びでした。
私たちが行うエクソソーム治療は、決して魔法ではありません。しかし、家族の想いと医療の力が重なったとき、そこには確かな希望が生まれる。患者さんとご家族が見せてくれる「生きようとする力」こそ、私がこの道を歩み続ける原動力です。
今後、エクソソーム治療や再生医療は どのように発展していくとお考えですか?
医療は、「壊れた部分を修復する医療」から、「身体そのものの力を引き出す医療」へと進化しています。
エクソソームはその中心的な存在であり、細胞が持つ自己修復力を高め、全身のバランスを整える可能性を秘めています。現在はまだ発展段階にありますが、研究が進めば、より安全で効果的な投与法や、疾患ごとに最適化された治療が実現するでしょう。
私が目指しているのは、「障害を治す」ことだけではなく、「生きやすさを広げる医療」です。子どもたちが少しでも自分らしく過ごせる時間を増やすこと。それが、再生医療の本当の意義だと思います。これからも科学の力と人の想いをつなぎ、希望の医療を形にしていきたいと考えています。
ドキュメンタリー映画「きみがいるだけで」をもっと詳しく:https://kimigairudakede.com/







