「エクソソーム」と一言でいっても、元になる細胞はバラバラです ― 由来(原料)の違いを患者目線で整理する(2026年7月)

この記事の位置づけ(過去記事との差分)

これまでこのブログでは、エクソソーム・幹細胞培養上清液について、規制当局の見方、海外(FDA)の扱い、学会の見解、広告と契約での自衛、薄毛(AGA)、美容ブーム、検査・診断への応用、法規制の議論、報告されている副作用、妊活・卵巣、世界の臨床試験の段階、投与経路(点鼻・点滴・注射)の違い、そして「塗る」化粧品と「医療で使う」注射の線引き——といったテーマを扱ってきました。

今回はそのどれとも別の角度です。**「そのエクソソームは、どの細胞から採ったものですか?」**という、原料そのものの話をします。

投与経路(どこから入れるか)でも、剤形(塗るか注射か)でもなく、出発点の細胞が何か。ここが違えば、中身も、研究の進み具合も、別の話になります。にもかかわらず、広告や説明では「エクソソーム」の四文字にまとめられてしまいがちです。今回はその中身を開けてみます。

「エクソソーム」は原料名ではなく、部品の名前です

まず前提の整理から。

エクソソームとは、細胞が出す非常に小さな袋のことです。中にはタンパク質や核酸などが入っていて、細胞どうしの「連絡便」のような役割をしていると考えられています。

ここで大事なのは、エクソソームは「どの細胞から出たか」で中身が変わるということです。手紙にたとえるなら、「封筒」がエクソソームで、「便箋に何が書いてあるか」は差出人によって違う、という関係です。封筒の形が似ているからといって、中身が同じとは限りません。

ところが「エクソソーム点滴」「エクソソーム治療」という言葉は、封筒の名前しか言っていません。差出人が誰なのかは、その言葉だけでは分からないのです。

実際、どれくらい種類があるのか

研究の世界で使われている「差出人」を並べると、想像以上に幅があります。

ヒトの細胞由来のもの

  • 臍帯(さいたい)由来:出産時のへその緒から採った間葉系幹細胞。現在の臨床試験でもっとも多く使われています。
  • 骨髄由来:古くから研究されてきた由来です。
  • 脂肪由来:脂肪組織から採るもの。美容領域の広告でよく見かけます。
  • 歯髄(しずい)由来:歯の内部の組織から採るもの。日本国内でも研究が行われています(後述する2026年の研究がその一例です)。
  • 神経幹細胞由来:脳・神経系の細胞から採るもの。2026年、アルツハイマー病を対象とした第1相試験が登録されました(ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT07554872)。ただし第1相は安全性を最初に確かめる段階であり、有効性が示された段階ではありません。

ヒト以外に由来するもの

  • 植物由来:たとえばタンポポなど、植物から取れる「エクソソーム様ナノ小胞」の研究が報告されています(マウスを用いた基礎研究の段階です)。
  • 細菌由来:腸内細菌などが出す小胞。こちらは「治療に使う」というより、体の中で炎症などに影響しているのではないかという、病気の仕組みの側から研究されている対象です。

同じ「エクソソーム」という言葉の下に、ヒトの臍帯もあれば、植物も、細菌もいる。これが実情です。

「培養上清液」と「エクソソーム」も、同じではありません

もう一段、混ざりやすいところを整理します。

幹細胞を培養すると、細胞が浮かんだ液体ができます。その上澄みが培養上清液です。この中には、エクソソームだけでなく、成長因子やさまざまなタンパク質が多数含まれています。エクソソームは、その中の一部の成分です。

つまり、

  • 培養上清液を投与する=上澄み全体(いろいろ入ったまま)
  • エクソソームを投与する=そこから小胞の部分を取り出したもの

は、同じ原料から出発していても、中身の構成が違います

これを実際に比べた研究が2026年6月に報告されています。東京大学医学部附属病院の顎口腔外科などのグループによるもので、ヒトの歯髄幹細胞から作った凍結乾燥の培養上清液を、マウスの歯周炎モデルで調べたものです。この研究では、培養上清液と、そこから精製したエクソソーム分画のタンパク質の顔ぶれを比較したところ、培養上清液のほうには炎症の調節や組織修復に関わる特徴が残っていたのに対し、エクソソーム分画のほうは組織のつくり替えや血管新生に関わる経路に偏っていたと報告されています(Regenerative Therapy誌、2026年)。

同じ歯髄から出発しても、どこを取り出すかで顔ぶれが変わる。「培養上清液」と「エクソソーム」を同じ言葉で語るのが乱暴だ、というのはこういう意味です。

なお、この研究はマウスを対象とした前臨床段階のものです。ヒトに投与した場合の有効性や安全性を示したものではありません。また、この研究では歯を支える骨の高さの回復までは認められなかったことも、あわせて報告されています。研究の良い面だけでなく、届かなかった部分まで書かれているのが、こうした論文の読みどころでもあります。

臨床試験の「差出人」には偏りがあります

では実際に、人を対象とした研究ではどの由来が使われているのでしょうか。

世界の臨床試験を登録する米国の公的データベース(ClinicalTrials.gov)を調べると、エクソソームや細胞外小胞を扱う募集中・募集予定の研究は250件あまりが登録されています(検索条件:介入に “exosome” ないし “extracellular vesicle” を含み、募集中〔Recruiting〕または募集前〔Not yet recruiting〕で絞り込み。2026年7月21日時点)。その中で介入試験(実際に投与して調べる試験)を見ていくと、臍帯由来のものが多く見られます

そして、直近に始まった試験を見ると、もうひとつ特徴があります。投与する場所を限定したものが多いのです。2026年7月に開始された試験には、膀胱の中に注入するもの(NCT07665619)、鼻にゲル状にして使うもの(NCT07635433)がありますし、少し前には点眼薬として使う試験(NCT07623382)も登録されています。いずれも**第1相(安全性を最初に確かめる段階)**で、参加人数は9人〜48人程度の小規模なものです。

ここから読み取れることは、控えめに言って2つです。

  1. 研究として進んでいるのは事実です。ただし多くは安全性を確かめる入口の段階であり、効果が確立した段階ではありません。
  2. 研究で使われている由来・投与法と、自由診療の広告で見かける由来・投与法は、必ずしも一致していません

それでも、承認された医薬品はまだありません

ここは繰り返しになりますが、記事の性質上、省略できません。

日本では、エクソソームや幹細胞培養上清液を用いた治療について、有効性・安全性が確認されて薬事承認を受けた医薬品はありません。厚生労働省はこの点について注意喚起を行っています。また2026年7月には、こうした治療を法規制の対象とするかどうかについて、厚生労働省の作業部会で議論が始まったと報じられています。

米国でも同様に、FDAが承認したエクソソーム製品は存在しません。FDAは未承認の再生医療関連製品について消費者向けの注意喚起を出しています。

つまり、由来が臍帯であっても、歯髄であっても、脂肪であっても、「承認された製品ではない」という点は共通しています。由来の違いを知ることは、優劣を決めるためではなく、「同じ言葉で語られているものが、実は別物である」と気づくためのものです。

報告されている健康被害について

未承認の製品を扱う記事である以上、ここは避けて通れません。

米国では、未承認のエクソソーム製品や幹細胞製品の投与を受けた人に、重篤な感染症(入院を要したもの)、アレルギー反応、失明、腫瘍形成といった健康被害が報告されています。2019年には米国ネブラスカ州で、エクソソーム製品の投与を受けた複数の患者が重い感染症を起こして入院する事例が起き、州の保健当局とFDAが注意喚起を行いました。

これらは「必ず起こる」という話ではありません。ただし、承認された医薬品と違い、未承認の製品では、製造の品質管理や副作用の追跡の仕組みが同じようには担保されていない——という点は知っておいてよいことだと思います。

説明を受けるときに、確かめておきたいこと

由来という視点を持つと、質問が具体的になります。受診前・契約前の確認事項として、次のようなことが挙げられます。

1.「何に由来するものですか」
臍帯なのか、脂肪なのか、歯髄なのか。ヒト由来なのかどうか。まずここです。

2.「培養上清液ですか、それともエクソソームを精製したものですか」
先ほど見たとおり、この2つは中身が違います。書面でどう表記されているかも確認しておくとよいでしょう。

3.「その由来・その投与方法で、人を対象とした研究はどこまで進んでいますか」
「エクソソームの研究が進んでいます」という説明と、「あなたに使う予定のものと同じ由来・同じ投与法での研究が進んでいます」は、別のことです。

4.「承認された医薬品ではないことは、書面で説明されていますか」
自由診療として行われる場合、この説明があるかどうかは重要な確認点です。

5.「起こりうる副作用と、その際の対応はどうなっていますか」
先ほど挙げたような健康被害の報告がある以上、避けて通れない確認事項です。万一のときにどこが対応の責任を負うのか——という点も含めて確認しておくとよいでしょう。

これらを尋ねることは、失礼なことでも、疑うことでもありません。説明を受けて納得したうえで決めるための、当たり前の手続きです。答えにくそうな様子であれば、その場で決めず、持ち帰って考える。それも選択肢のひとつです。

まとめ

  • 「エクソソーム」は封筒の名前であって、原料の名前ではありません。差出人(由来する細胞)が違えば、中身も違います
  • 臨床研究では臍帯由来が多く使われていますが、骨髄・脂肪・歯髄・神経幹細胞、さらには植物や細菌に由来するものまで、研究対象の幅は広がっています。
  • 「培養上清液」と「エクソソーム」も同じではありません。同じ原料から出発しても、取り出す部分によってタンパク質の顔ぶれが変わることが、2026年の研究で報告されています。
  • 人を対象とした研究の多くは、安全性を確かめる第1相の段階で、参加人数も小規模です。
  • 未承認の製品では、重篤な感染症などの健康被害が報告されています
  • そして、由来が何であれ、日本でもアメリカでも、承認された医薬品はまだありません

情報に振り回されないための道具として、「それは何に由来するものですか」という一言を持っておく。今回お伝えしたかったのは、それだけです。

まずはカウンセリング・ご相談のご予約を


参考にした情報


本記事は一般的な健康情報であり、特定の治療をすすめたり、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や治療に関するご判断は、主治医・医療機関にご相談ください。


エクソソーム治療におけるリスクと留意事項

  • 未承認医薬品等について:本治療で用いるエクソソームは、国内の薬機法において承認された医薬品ではありません。医学的効果については現在世界中で研究が進められている段階であり、確立された標準治療とは異なる点をご理解ください。
  • 個人差について:体質や病状により反応には個人差があり、期待される変化が得られない場合があります。
  • 副作用のリスク:投与後に発熱、倦怠感、発疹などのアレルギー反応が生じる場合があります。
  • 品質の非均一性:エクソソームは製造方法や濃度によって品質に差が生じやすく、常に一定の均一性が保証されているわけではありません。
  • 長期安全性の未確立:数年単位での長期的な安全性や身体への影響については、十分な蓄積データがまだ存在しません。
  • 全額自己負担:本治療は公的医療保険の適用外となる自由診療です。
  • 適応の判断:事前の診察において、基礎疾患や服薬内容により治療の適応外と判断させていただく場合がございます。
  • 入手経路等:本治療に用いるエクソソームは、国内の細胞加工施設(特定細胞加工物製造施設番号:FA5250001)にて製造されたものです。
  • 国内の承認医薬品等の有無:本治療と同一の成分・性能を有する、国内で薬機法上の承認を得た医薬品はありません。
  • エクソソームを⽤いた治療は、諸外国においても医薬品として承認された実績はありません(2026年4⽉現在)。現在、各国で臨床研究・治験が進⾏中の段階です。主なリスクとして、アレルギー反応、注射部位の感染、発熱等が海外⽂献において報告されています。
  • 本治療に使用するエクソソームは国内の薬機法上の承認を得ていないため、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。

1ml = 22,000円(税込)

投与方法:点滴(5〜10ml)
※お支払いはクレジットカードかQR決済のみ対応(現金不可)

○初診料:3,300円 
○点滴:110,000円(5ml) 〜 220,000円(10ml)

本治療は自由診療(保険適用外)となります。
※上記価格には、カウンセリング料、手技料等が含まれます。

本治療に使用するエクソソームは国内の薬機法上の承認を得ていないため、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。医師が事前に詳しくご説明した上で、治療を実施いたします。

プライスについて、もっと詳しく

監修:平林大輔

東京大学医学部健康科学看護学科卒|群馬大学医学部医学科卒|医師、看護師、保健師|日本専門医機構認定 産婦人科専門医
看護師として臨床勤務後、医学部に再入学し医師となる。市中病院にて産婦人科医として研鑽を積む。エクソソームに出会ったあとは、その可能性に惹かれ治療に取り組む。延べの診察人数は3500名以上、直近1年間では1800名以上にのぼる(2026年2月現在)。特に脳性麻痺や急性脳症後遺症、自閉症といった子どもたちの診療に力を入れている。
【資格・所属学会】日本産婦人科学会|日本細胞外小胞学会
※数値は2026年2月現在の当院電子カルテ集計による