「エクソソームをやった」と言うとき、それはどこで受けたものですか ― サロン・ライブ配信の時代に、受ける場所・買う場所を確かめるという話

診察室で「エクソソームをやってみたんです」と聞くことが増えました。そのときまず知りたいのは、効いたかどうかより前に、それをどこで受けたのか、あるいはどこで買ったのかです。

同じ「エクソソーム」という言葉が、いま少なくとも三つのまったく違う場所で使われています。医療機関で注射や点滴として行われるもの。通信販売や店頭で買える化粧品として塗るもの。そして、その中間に見える「サロン」と呼ばれる場所で提供されるサービスです。法律の扱いも、確認できる情報の量も、何かあったときの相談先も、この三つでまるで違います。

このブログではこれまで、化粧品と医療の線引き(角層のバリアと経皮吸収)、原料となる細胞の違い、製造・品質管理、研究の質の見分け方、そして幹細胞治療と分泌物治療の違いを扱ってきました。今回は視点を変え、成分ではなく「受ける場所・買う場所」の話を整理します。

まず押さえておきたい、二つの事実

ひとつ目。厚生労働省は2024年7月31日の事務連絡(医政局研究開発政策課「細胞培養上清液及びエクソソーム等を用いる医療について」の周知)などで、ヒトの幹細胞の培養上清液やエクソソーム等を用いた医療について、国内外を含め、有効性・安全性が示され薬事承認を得て製造販売されている医薬品はないという見解を示しています。研究は各国で進んでいますが、「承認された薬」として使えるものは、現時点では存在しません。

ふたつ目。注射や点滴といった体内に何かを入れる行為は医行為であり、日本では医師のいる医療機関でしか行えません(医師法第17条)。この線引きは、成分が何であっても変わりません。

この二つを土台に、三つの場所を見ていきます。

① 医療機関で受ける場合 ― 承認された薬ではない、という前提から始まる

医療機関でエクソソームや幹細胞培養上清液を用いる場合、それは承認された医薬品ではなく、医師の判断で行われる自由診療という位置づけになります。

ここで大切なのは、「承認されていない」ということは、有効性と安全性を国が審査した記録がないという意味であって、「安全が確かめられた」わけでも、必ずしも「危険と分かっている」わけでもない、という点です。

日本再生医療学会は2024年4月30日に「細胞外小胞等の臨床応用に関するガイダンス(第1版)」を公表し、無菌管理や交差汚染の管理が不十分な場合には重篤な事故につながりうると注意を促しています。「何を使うか」より「どう作り、どう管理したか」が安全性を左右するという考え方です。ここは、成分名だけを見ていると見落とされる部分です。

医療機関では、診療録が残り、医療広告のルールや行政の指導の対象になります。これは効果の保証ではなく、医療機関ならどこでも同じという意味でもありません。制度上、記録が残り、相談先が特定できる——手続き上の違いがある、それだけの意味です。

② 化粧品として塗る場合 ― 「配合されている」と「効く」は別の話

化粧品の美容液などに「エクソソーム配合」と書かれている場合、これは化粧品としてのルールの中での表示です。化粧品は、肌を清潔にしたり、うるおいを与えたりといった範囲の目的で販売されるもので、病気を治したり体の構造を変えたりする目的で売ることは、法律上できません。

見落としがちな点が二つあります。ひとつは、原料の由来が製品ごとに違うことです。ヒトの細胞に由来するものと、植物に由来するものは、同じ「エクソソーム」という言葉で語られていても中身は別です。実際に、植物由来のエクソソームや幹細胞培養液を配合したと説明される美容液が販売されています。「エクソソーム配合」という一語からは、どちらなのかは分かりません。

もうひとつは、塗ったものが皮膚のどこまで届くのかが、まだよく分かっていないことです。皮膚科学で一般に知られているとおり、皮膚には角層という強いバリアがあり、大きな粒子は簡単には通り抜けられません。「配合されている」ことと「肌の中で働く」ことの間には、確かめられていない距離があります。

③ 「サロン」で受ける場合 ― ここがいま、いちばん確かめにくい

近年、「エクソソーム」を掲げるサロンやスキンケアブランドが増え、両者が連携する形態も見られるようになっています。

ここで確認したいのは、サロンを批判することではなく、そこが医療機関なのかどうかという一点です。

サロンが医療機関でない場合、注射や点滴といった医行為は行えません。そこで提供されているのは、塗る・浴びる・機器を当てるといった範囲のサービスであるはずです。一方で、掲げられている「エクソソーム」という言葉そのものは、医療の場で使われるものと同じです。言葉が同じで、場所と法的な位置づけが違う——ここがいま、患者さんにとって最も見分けにくいところです。

これは日本だけの話ではありません。中国の国家衛生健康委員会は2026年7月15日の記者会見で、幹細胞治療は資格のある医療機関が行うべきものであり、美容院や養生館といった非医療機関は医療行為を行ってはならないと改めて注意を促しました。「誰が・どこで提供するか」を国が線引きし直す動きが、複数の国で同時に起きているという文脈の中に、日本の状況もあります。

日本では、厚生労働省が培養上清液やエクソソームを用いた医療について法規制のあり方を検討しており、2026年をめどに措置を講じることを想定していると報じられています。議論はまだ進行中で、結論は出ていません。

買い方も変わっている ― 10分で完売する、という現象

2026年7月24日に配信された企業のプレスリリース(株式会社Sホールディングス)によると、あるTikTokのライブコマース番組で、エクソソームや幹細胞培養液を配合したと説明される美容液が、配信開始から約10分で在庫完売し、売上900万円を超えたとされています。

これは企業側の発表であり、第三者が検証した数字ではありません。同じ番組の別商品(サプリメント)についても「約10分で完売・売上900万円」という発表が出ており、この数字は実測の記録というより、販促上の節目として示されたものと読むのが妥当でしょう。 ただ、売れ方そのものは事実として観察できる現象です。

ライブ配信での販売には、書かれた広告とは違う性質があります。説明は口頭で流れて後から読み返しにくく、「残りわずか」という状況が判断を急がせ、質問できる相手は販売する側です。

美容医療の分野では、国民生活センターに寄せられる相談が増加しており、2023年度に約6,000件だったものが2024年度には1万件を超えたと報告されています。相談事例には、その場での契約や施術を迫られる勧誘が含まれます。販売の形式が変わっても、「急がされたときは一度離れる」という自衛の原則は変わりません。

国境を越えると、扱いが変わる

海外の通販サイトで買ったり、旅行先で施術を受けたりする場合は、注意が必要です。ヒト細胞に由来するエクソソームを化粧品の原料として使えるかどうかは、国によって扱いが大きく異なります。

各国の規制動向を整理した2026年春の業界分析(規制コンサルティング企業 CIRS)によると、米国は比較的許容的で、多数のエクソソーム関連原料が化粧品成分名(INCI名)として登録されています。一方、EUはヒト組織由来成分の化粧品使用を禁じ、中国もヒト由来物質を化粧品原料として認めていません。

台湾では、ヒトの細胞・組織に由来する成分は化粧品の禁止成分として扱われてきましたが、2024年3月に「当局の個別審査を通過したヒト由来エクソソームはこの制限を受けない」という例外の手続きが定められ、2026年2月にはその申請書類の要件が一部見直されました(急性毒性試験の提出が「必須」から「個別判断」へ)。禁止のままではなく、審査を通せば通り得る形に整理された、という動きです。

日本では、幹細胞培養上清液は化粧品原料として使用可能とされていますが、「生物由来原料基準」の「ヒト由来製品原料」に関する要件を厳格に満たすことが求められます。「使える」と「誰でもすぐ使える」は違う、ということです。

(なお、以上は各国当局の一次資料そのものではなく、業界分析に基づく整理です。)

つまり、日本で買えるからといって、国際的に安全性のお墨付きを得たという意味ではありません。逆に、ある国で扱いが厳しいからといって、日本の製品が問題を抱えているという意味でもありません。同じ言葉なのに、国ごとに置かれている棚が違う、というだけのことです。

受ける前・買う前に、静かに確かめられること

効果の判断はここでは扱いません。場所と情報について確かめられることだけを挙げます。

  1. そこは医療機関ですか。 医師が診察し、診療録が残る場所かどうか。サロンやエステであれば、注射や点滴は行えません。
  2. 何を、どこから来た材料で使うのですか。 ヒト由来か植物由来か。培養上清液そのものか、エクソソームを取り分けたものか。答えられない場合、それ自体が情報です。
  3. どのように作られ、どう品質を確かめていますか。 無菌性や品質管理の説明があるか。学会のガイダンスが重視している点です。
  4. 起こりうる不具合と、そのときの連絡先は。 承認された薬ではない以上、副作用の情報は蓄積が限られます。何かあったときに誰に連絡するかを、受ける前に確認します。
  5. その日に決めなくてよいか。 持ち帰って考える時間が取れない場面では、いったん離れる。これがいちばん実務的な自衛です。

医師に伝えてほしいこと

何らかのエクソソーム関連のサービスを受けた、あるいは製品を使ったのであれば、かかりつけの医師や、その症状を診ている医療機関を受診する際に、そのまま話してください。叱るためではありません。

どこで受けたのか(医療機関か、サロンか、自分で買って塗ったのか)、いつ、どのくらいの期間、体調の変化があったか。この情報は、その後に体に起きたことを考えるときの手がかりになります。言いにくい話ほど、診断の役に立ちます。

まとめ

  • 薬事承認を得た医薬品は国内外にありません(厚生労働省)。
  • 注射・点滴は医行為で、医療機関でしか行えません。「サロン」は法的な位置づけが異なります。
  • 化粧品としての「配合」は、肌の中で働くことを意味しません。ヒト由来か植物由来かも表示だけでは分かりません。
  • 販売の場も受ける場も、医療の外側へ広がっています。 ライブ配信での即時購入は、急がされやすい形式です。
  • 化粧品原料としての扱いは国ごとに大きく異なり、日本で買えることは国際的なお墨付きを意味しません。
  • 迷ったときに確かめるのは、効果ではなく場所・材料・作り方・連絡先・そして考える時間があるかです。

基礎研究や臨床研究は各国で続いており、今後の医療にどう位置づくかは、これから確かめられていく段階です。その段階にあることと、いま目の前にある広告や販売の勧めは、別の話として分けて受け取るのがよいと考えています。

まずはカウンセリング・ご相談のご予約を


【筆者について】 本記事の筆者は、自由診療としてエクソソーム・幹細胞培養上清液に関連する診療を行う医療機関の医師です。そのため「医療機関で受ける場合」の記述には筆者自身の立場が含まれます。この点を踏まえてお読みください。

本記事は一般的な健康情報であり、特定の治療をすすめたり個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や体調についてのご相談、また実際に受けるかどうかのご判断は、主治医・医療機関にご相談ください。


エクソソーム治療におけるリスクと留意事項

  • 未承認医薬品等について:本治療で用いるエクソソームは、国内の薬機法において承認された医薬品ではありません。医学的効果については現在世界中で研究が進められている段階であり、確立された標準治療とは異なる点をご理解ください。
  • 個人差について:体質や病状により反応には個人差があり、期待される変化が得られない場合があります。
  • 副作用のリスク:投与後に発熱、倦怠感、発疹などのアレルギー反応が生じる場合があります。
  • 品質の非均一性:エクソソームは製造方法や濃度によって品質に差が生じやすく、常に一定の均一性が保証されているわけではありません。
  • 長期安全性の未確立:数年単位での長期的な安全性や身体への影響については、十分な蓄積データがまだ存在しません。
  • 全額自己負担:本治療は公的医療保険の適用外となる自由診療です。
  • 適応の判断:事前の診察において、基礎疾患や服薬内容により治療の適応外と判断させていただく場合がございます。
  • 入手経路等:本治療に用いるエクソソームは、国内の細胞加工施設(特定細胞加工物製造施設番号:FA5250001)にて製造されたものです。
  • 国内の承認医薬品等の有無:本治療と同一の成分・性能を有する、国内で薬機法上の承認を得た医薬品はありません。
  • エクソソームを⽤いた治療は、諸外国においても医薬品として承認された実績はありません(2026年4⽉現在)。現在、各国で臨床研究・治験が進⾏中の段階です。主なリスクとして、アレルギー反応、注射部位の感染、発熱等が海外⽂献において報告されています。
  • 本治療に使用するエクソソームは国内の薬機法上の承認を得ていないため、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。

1ml = 22,000円(税込)

投与方法:点滴(5〜10ml)
※お支払いはクレジットカードかQR決済のみ対応(現金不可)

○初診料:3,300円 
○点滴:110,000円(5ml) 〜 220,000円(10ml)

本治療は自由診療(保険適用外)となります。
※上記価格には、カウンセリング料、手技料等が含まれます。

本治療に使用するエクソソームは国内の薬機法上の承認を得ていないため、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。医師が事前に詳しくご説明した上で、治療を実施いたします。

プライスについて、もっと詳しく

監修:平林大輔

東京大学医学部健康科学看護学科卒|群馬大学医学部医学科卒|医師、看護師、保健師|日本専門医機構認定 産婦人科専門医
看護師として臨床勤務後、医学部に再入学し医師となる。市中病院にて産婦人科医として研鑽を積む。エクソソームに出会ったあとは、その可能性に惹かれ治療に取り組む。延べの診察人数は3500名以上、直近1年間では1800名以上にのぼる(2026年2月現在※)。特に脳性麻痺や急性脳症後遺症、自閉症といった子どもたちの診療に力を入れている。
【資格・所属学会】日本産婦人科学会|日本細胞外小胞学会
※数値は2026年2月現在の当院電子カルテ集計による